世界50カ国58人のおばあちゃんの自慢料理
「世界のおばあちゃん料理」ガブリエーレ・ガリンベルティ著、小梨直訳 河出書房新社 1600円+税
母一人子一人の母子家庭で育った私は、小さいころからおばあちゃんに憧れていた。「世界のおばあちゃん料理」の表紙のおばあちゃんを見て、びっくりした。昔、よく銭湯でお見かけしたおばあちゃんにそっくりだった。白髪の愛らしいおばあちゃんである。
早速、彼女の料理のページを開いてみた。フェルナンダ・デ・ギアさん、71歳。あれ、まだお若いんだ。マニラに暮らしている彼女を、イタリア人のカメラマンのガブリエーレ・ガリンベルティさんが訪ねた。トスカーナの田舎町で育った彼は、「おばあちゃん子」だった。世界50カ国、58人のどのおばあちゃんとも仲良くできた。あでやかな58歳のコロンビア、ボゴタのカルメンさんが料理はおいしいコーヒーよ、とにんまりしている写真もおかしい。写真に添えられた文章も、それは温かく伝わってくる。
レシピも、丁寧だ。息子が3人に孫は5人のフェルナンダさんは、いつも食事は近所の子供たちが集まってきて一緒に食べるという。彼女の得意料理は、シニガン。豚肉と野菜入りタマリンドのスープである。タマリンドは、マメ科の一種らしい。しかしこれは、日本の豆で代用できそう。早速、作ってみたくなった。
ノルウェーはベルゲンのシノーヴェ・ラスムッセンさん77歳の作るキョツパ、おいしそうである。アイスランド風牛肉と野菜のスープは、寒さを吹き飛ばすのに最高だろう。彼女は、夏に孫の小さな男の子が来たとき、世界一しあわせなあばあちゃんになる。
サンパウロのマリアさんは、43歳。もう孫がいるとはいえ、おばあちゃんというにはいかにも若すぎる。結婚しようとしない娘を持つわが身が、ふと思われた。
本の冒頭には著者最愛のおばあちゃん、マリーザさん。最後のページは母のパオラさんの笑顔が登場する。小学校の先生のマンマは、実は料理があまり得意ではない。お菓子のティラミスだけはおいしく作れるというところが、ほほ笑ましい。