「Sleep,Sleep,Sleep」クリスティアン・ベネディクトほか著 鈴木ファストアーベント理恵訳

公開日: 更新日:

 健康のための生活習慣といえば、食事や運動が真っ先に浮かぶ。では、睡眠はどうか。その質や毎日の眠り方について、食事や運動のように気を配っているだろうか。本書では、スウェーデンの睡眠研究のスペシャリストが、睡眠に関する最新情報を一挙紹介。睡眠によって得られる驚くべき健康効果について解説している。

 睡眠中、私たちの体の中ではメラトニンというホルモンが大量に分泌されるが、これには誤ってプログラムされた細胞を探し当てる働きを持つことが明らかになっている。つまり、しっかりと睡眠をとることは、早期にがん細胞を探し出し特定のがんリスク低減に寄与すると考えられるわけだ。

 さらに、私たちが眠りにつくと、神経組織に栄養を運ぶ役割を担うグリア細胞と呼ばれる特別な細胞が、今度は脳組織が日中にため込んだ老廃物の排出に取り掛かる。睡眠中に、脳組織が洗浄されるのだ。言い換えれば、睡眠が不足していると脳の清掃部隊が機能せず、ゴミがたまっていくということ。

 ゴミの中にはアルツハイマー型認知症の要因といわれるアミロイドβというタンパク質も含まれる。アメリカの研究では、たったひと晩の睡眠不足で、記憶に関わる脳の海馬という部位のアミロイドβ量が5%も増加することが判明しているのだという。

 他にも睡眠には、腸内細菌のバランスを整える、代謝を高める、感情を安定させるなどさまざまな効果があることを示す本書。単糖類や不飽和脂肪酸は眠りを浅くするため、夜は甘いものやスナック菓子を避けること、午前中に運動すると夜の入眠がスムーズになるなど、良質な睡眠のための生活習慣も伝授している。眠りを味方につけて健康長寿を目指そう。

(サンマーク出版 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動