「東大×SDGs」東京大学未来社会協創推進本部監修

公開日: 更新日:

 東京大学では、全学部を挙げて各分野のトップランナーによるSDGs実現に向けたプロジェクトが進行中だ。本書ではその中から、代表的な87のプロジェクトを紹介している。

 SDGsのGOAL2「飢餓をゼロに」の達成に向けては、先端農学×先端工学で農業人口の高齢化や食料不足の解決に挑んでいる。例えば、ドローンや自律移動ロボットを用いて作物の画像データ収集・分析を行い、人の目で農地を確認しなくても葉の色や樹木の高さから育成状況を把握することを目指す。このデータを駆使すれば生産管理が容易になり、必要な箇所への効率的な施肥なども可能に。またVR技術を活用して樹木1本ずつを3次元計測し、VRの世界に農園を再現。これに基づいて現地作業者に遠隔で指示を送る技術も研究中だ。実現すれば、熟練者が現地にいなくても広域で精度の高い農業生産が可能になるという。

 GOAL14「海の豊かさを守ろう」の実現には、DNA解析を用いている。海水に含まれるDNAを調べる手法は、微生物に関しては行われてきた。しかし東大のプロジェクトでは、サケやサバなどの魚類も対象とし、海洋生物群の分布や回遊ルートなどを把握できる生物海図の作成を目指している。オーシャンDNAと呼ばれるこのデータが活用できれば、種を特定した分布状況の把握につながり、保護すべき種や区域の検討に役立つ。海洋環境変動による影響の未来予測にもつながるという。

 他にも、光触媒を用いて二酸化炭素を資源に変えるプロジェクトや、日本の古代から明治までの日本史史料を研究する史料編纂所と地震研究所がタッグを組んだ災害予測など、ワクワクするような最先端研究が分かりやすく解説されている。

(山川出版社 1980円)

【連載】ポストコロナの道標 SDGs本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」