「スヌーピーと生きる」 チャールズ・M・シュルツ伝 リタ・グリムズリー・ジョンスン著 越智道雄訳

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 チャールズ・M・シュルツはアメリカの漫画家で、スヌーピーの生みの親。2000年の2月、77歳で亡くなるまで、50年にわたって新聞連載漫画「ピーナッツ」を描き続けた。アシスタントは使わず、アイデアも絵もせりふもすべて自分でつくる。来る日も来る日も、四角い枠をチビッコや犬で埋め続ける。ライセンスグッズが世界中で売れて大金持ちになっても、控えめな生き方は変わらなかった。穏やかで品が良く、スポーツをこよなく愛する紳士だった。

 シュルツは床屋の一人息子で、ミネソタ州セントポール生まれ。子どもの頃から絵がうまく、高卒後、画家養成学校で学んだ。卒業後はこの学校で教えながら自分の漫画を辛抱強くシンジケート(配信会社)に売り込み、「ピーナッツ」の新聞連載を勝ち取った。

 この評伝の作者はシュルツをよく知るジャーナリスト。「ピーナッツ」に登場するキャラクターに、シュルツのさまざまな面を垣間見ている。ウイットのあるビーグル犬スヌーピー、ヘマばかりで「まいっちゃうよ」が口癖のチャーリー・ブラウン、気難し屋のルーシー、思慮深いライナス、音楽を敬愛するシュローダー……。中でもシュルツとチャーリー・ブラウンには共通点が多いという。純真で頑固、敗北感に打ちのめされて傷つく。おかしくも悲しい、愛すべき少年。

 シュルツの心にも、なぜか諦めや寂寥感がつきまとっている。若い日の徴兵体験か、母の死か、それとも天才の宿命なのか、理由は謎のまま。シュルツは「面白い漫画」を描くことに心血を注いできたのだが、「ピーナッツ」のユーモアは、幸福ではなく悲しみから生まれ出る。

「敗北は滑稽だが、勝利は面白くもなんともない」とシュルツは語っている。単純な線で子どもや犬を描いた漫画がこれほど生き永らえているのは、人生の本質を突いて共感を呼ぶからなのだろう。

(朝日新聞出版 2750円)

【連載】ノンフィクションが面白い

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