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井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

necoya books(立川)「猫のためになることをやりたくなって開業しました」

公開日: 更新日:

 去年の8月オープン。神保町と三軒茶屋に次ぐ、都内3軒目の猫の本専門店だ。ただただ猫の本がいっぱいなのかな? くらいに思って訪れて「おみそれしました」である。

 入り口左手のゆったりスペースに村山由佳の「命とられるわけじゃない」、ドラマにもなった梅田悟司著「捨て猫に拾われた男」などがニコニコした猫のぬいぐるみを交えて置かれている。右手にはカラフルな絵本がずらり。

 25平方メートルに約2000冊。一見、私の最初の見立ては間違ってなさそうだし、店主・柳智恩さんの開業動機も「8年前に猫を飼い始めて人生が変わって。6年前に子どもが生まれ、絵本の魅力にハマり『絵本セラピスト』の資格も取って。猫のためになることをやりたくなって」。

 そのあたりまでは「ふむふむ」だったが、「ソウル生まれの韓国人。高校、大学はアメリカ。2003年に就職で日本に来て、コンサル会社で働いてましたが」って経歴に「ほー」。

 よく見れば、絵本の棚には日本語、英語、ハングル語のものがおよそ3分の1ずつ。「柳さんのとりわけお好きな1冊は?」に、高橋和枝著「うちのねこ」を2冊手になさる。1冊は日本語、もう1冊はハングル語。

「元野良猫だった、警戒心強い子がやってきて、時間をかけて“うちの子”になっていくお話。人間同士の間柄も同じじゃないかなって。この本、好きになりすぎて、自分でハングル語訳して韓国の版元に売り込んだんです」

 ハングル語版は、柳さんの訳本だったのだ。

「ファンタジーなら、これもたまらない」とさらにもう1冊、蜂飼耳・文、牧野千穂・絵「うきわねこ」を案内くださる。「韓国じゃ日本の文庫本のような手軽な本は気に入られず、装丁に凝った奇麗な本が好まれるんですよー。アメリカは普通かな」と、とても美しい箔押し印刷の韓国の猫本を見せつつ書籍文化の3国比較話も。そんな話に興じつつ見渡すと、日本の絵本の塊の中に、私の愛読書「100万回生きたねこ」があって、ふと安心したり。楽しすぎて2時間以上滞在。

◆立川市富士見町2-11-7/JR中央線立川駅北口から徒歩12分/正午~18時、木曜休み

ウチのオススメ本

「MEOW A NOVEL」SAM AUSTEN著

「キリッとした表情の表紙の子に、私は引きつけられました。なんと“猫に読んであげる小説”なんですよ、これ。『Meow』つまり日本語にすると『にゃおー』の文字がものすごい量、出てきます(笑)。でも、ストーリーがちゃんとあるんですって。今年6月刊。346ページのペーパーバック。アメリカっぽいですね。ぜひ愛猫に読み聞かせを(笑)」

(Meow Library)2200円(売値)

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