著者のコラム一覧
山田勝仁演劇ジャーナリスト

「三十郎大活劇」舞台にみなぎる“ラブ&ピース”の反戦メッセージ

公開日: 更新日:

 初演は1994年の劇団ラッパ屋公演。ブッシュ、エリツィン米ロ両大統領が敵対から友好へ転換宣言。東西冷戦の終わりの頃だ。今再び冷戦に引き戻されようとする時代に再演されるのも不思議な符合といえる。しかし、「この戦争は野暮も野暮、大野暮だ!」と大見えを切る三十郎のセリフは、ウクライナ戦争で浮足立ち、改憲論者が勢いづく今の日本でこそ聞かせたい。

「捕まったらどうする」「なーに、追いかける奴より速く逃げればいいだけさ」というセリフに込められた「ラブ&ピース」の反戦メッセージが舞台にみなぎった。

 現実とフィルムの虚構の間に遁走する三十郎の姿は川島雄三監督の名作「幕末太陽傳」で、実際には撮られなかった幻のラストシーンへのオマージュか。

 青柳はその偉丈夫ぶりといい、艶っぽさといい三十郎役にピッタリ。近藤もキリリとした風貌と哀愁漂うたたずまいで存在感を見せつけ、福本、松村、三上、小倉、那須、竹内都子、弘中麻紀らベテランがしっかりと脇を固めた。何よりも、笑いをたっぷりまぶしたラサール石井の演出が総勢20人以上のキャストそれぞれの個性を際立たせた。

 休憩20分挟み2時間50分。新国立劇場中劇場で17日まで。 ★★★★

※4月23~24日は大阪・OSAKA WWホール。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」