元衆院議員 与謝野馨さん(76) 下咽頭がん ㊤
副作用で握力がなくなり、ゴルフ場でクラブを飛ばすこともありました。食事は、仕事柄ほぼ会食。妻にも言わなかったので、家の食生活も変えなかった。その後のがんの時も今も、食は変えてはいません。年のせいで食べる量はやや減りましたが、食が細ると意志も弱る。強い意志を持つために食はしっかり取るようにしています。がんのことを鬱々と考える暇なんてありませんでした。
その後、49歳で悪性リンパ腫が再発した時は、抗がん剤治療でひどい吐き気に襲われたこともありました。治療前に30万円以上もするカツラを作らされたけど、自分では「治療をしても毛も抜けない」と過信していた。すると3週間後に突然毛が抜けてね。カツラのお世話にもなった。
以来、62歳で直腸がん、63歳で前立腺がん、68歳で下咽頭がんとがん続き。抗がん剤治療、放射線治療、ホルモン療法……。がん治療と副作用はかなり体験していると思いますね。
そんながん治療の中でも一番つらかったのは、麻生内閣で財務大臣を務めていた2009年ごろ。前立腺がん治療の後遺症で、尿管が詰まる膀胱炎。膀胱の内壁が傷ついて出血し、血がゲル状になってはがれ落ち、尿管を詰まらせる。尿で押し出せないと、2~3時間で七転八倒の苦しみがやってくる。緊急で病院に駆け込み、尿管に管を通して医師に詰まりを取ってもらわないといけない。財務大臣としてG20でイギリスに行った時は麻生総理にお願いして、医師を同行させてもらうほどでした。