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佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

大丈夫にみえた患者さんが「おかしい」と連絡が入った

公開日: 更新日:

膵臓がんで手術はできないと告げられて…

 私の失敗談をお話しします。7~8年ほど前、元アナウンサーのYさん(63歳・男性)が、膵臓がんの疑いにより消化器外科で全身麻酔での手術を受けました。ただ、開腹してみるとがんは腹膜まで広がっていて、切除できずにそのまま閉腹となりました。

 手術翌日、Yさんは担当医から「がんは切除できなかった。今後は抗がん剤専門の化学療法科(腫瘍内科)で治療することを勧める」といったことを告げられたといいます。私は外科担当医から報告を受け、またYさんは了解されているとのことで手術2日後にYさんのところに伺いました。

 初めてお会いしたYさんは、手術後すっかり覚醒しておられる印象を受けました。奥さんも同席された場で、Yさんは「病気のことは隠さず話して下さい。覚悟はできています。私はクリスチャンです。死んだら○○教会にお願いできます。すべて教えて下さい。自分は絶対に乱れたりしません」と希望されました。

 私は、すでに外科医から説明されていることでもあり、またYさんのお気持ちも聞いたことから、膵臓がんであったこと、手術ではがんが取れなかったこと、これからは抗がん剤治療を勧めることをお話ししました。もし抗がん剤治療に同意されるなら入院中に開始して、副作用が大丈夫ならその後は外来治療としたいこともお伝えしました。

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