大丈夫にみえた患者さんが「おかしい」と連絡が入った
さらに、奥さんに対して怒る言葉がたくさん聞かれました。
私は「Yさんは『自分は大丈夫』と口にしていたものの、実際は強い心理的ストレスを受けていて、その精神状態の表れではないか」と心配になりました。
私はすぐに精神科医に相談し、診察してもらうことにしました。精神科医の診断は「がん告知の心理的原因よりも、手術後の譫妄だろう」とのことで、精神安定剤が処方されました。「譫妄」とは、身体的な異常(手術後では1~3日後に起こる)や薬剤によって引き起こされる脳機能不全で、周囲の状況が把握できない、幻覚、興奮などの症状が表れます。多くは一時的な症状です。
私は、もう2~3日、術後の譫妄が表れないかどうかを見極めてから説明すべきだったと反省しました。
精神科医の処方もあり、幸いYさんは数日で病状は好転しました。10日後に再度、病気の説明をしましたが、Yさんは前回と同様に納得され、治療を受けられることになりました。
それにしても、Yさんにとっては「がんは手が付けられない状態だった」と告げられたことは、どう考えても大変なショックだったのは間違いありません。