日本は米国の「自己決定権が最も重要」とされる医療とは違う
極端な話かもしれませんが、もし自殺するために崖から落ちようとしている人を見つけたら、有無を言わさずまず助けます。本人の意思に関係なしに助けます。本人の遺書があっても、まず助けます。それはわれわれ人間の本能のようなものだと思います。ですから、本人の意思や自己決定権よりも大切なもの、それは「いのち」なのだと思うのです。
■「いのちを最大限尊重する」ことが大切
たとえば、輸血を拒否する宗教があります。以前、子宮に腫瘍のある患者さんが手術が必要となったのですが、信仰上の理由で輸血はできないとのことで、輸血しない手術をしてくれる病院を探しているという話を聞いたことがありました。
手術で、交通事故で、大出血しても、何があっても輸血を受けない。この場合、本人の意思だからといって本当に輸血をしないと決めてしまってよいのでしょうか? 病院に大出血した人が運ばれて、輸血も用意してあって、血圧が下がって瀕死の状態となって、輸血以外に救命手段がないとなったら……。宗教上の理由があるからといって、輸血をしないで死ぬのを黙って見ていられるのでしょうか? 輸血さえすれば助かるいのち、なのにです。