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玉置妙憂看護師・僧侶

東京都生まれ、53歳。専修大学法学部卒業後、法律事務所に勤務。長男の重い病気が動機になり30歳の時、看護師資格を取得。46歳の時に、がん闘病の主人を自宅でみとった後、高野山真言宗に得度した。臨床宗教師としても講演、執筆活動を行っている。「大慈学苑」主宰。

「ありがとうという言葉は、今日言いなさい」

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 現在なお、がん末期の告知を受けた人、または病床に伏している人や、患者を介護する家族からさまざまな相談を受け、的確なアドバイスを行っている。

 アドバイスといっても、玉置さんは多くを語らない。説教や批判も皆無で、励ましの言葉さえも不要にしている。

 本人や家族から話を聞く「傾聴」の時間は、相手が8割、残りのわずか1~2割程度が玉置さんの持ち分だ。質素な作務衣姿で対座し、静かに聞きながら深くうなずく。

■やりたいことは前倒しに

「とにかく話を聞いて、聞き流します。たまに“死ぬ直前に妻に面倒かけたね、ありがとうと言いたい”という人には、ダメです。ありがとうという言葉は、今日言いなさいねと、一言付け加えます」

 また、重い病気にかかり、ある程度死期を予測できた人は、生命保険証書の確認や財産、あるいは周囲にある本を整理するなど、死の準備に入る。部屋を片付けながら、「そのうち北海道旅行か、温泉に行きたい」「一度行ってみたい国がある」「久しぶりに会いたい人がいるから、そのうち会ってみるか」など、ぼんやりと思いまねく。玉置さんが言う。

「そんな将来の楽しい夢など、どんどん前倒ししたらいいのです。自分を犠牲にして頑張ってきた人ほど、実現できない理由を挙げます。でも、意外かもしれませんが、紙に、実際にやりたいことを書き出してみてください。実行できることが多くあります。楽しいことを優先したらいいのです」

【連載】看護師僧侶「死にゆく人の心構えと接し方」

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