ただ血糖値を下げるだけでは患者の予後は良くならない
前回、「肥満がなぜ悪いのか」についてお話ししました。肥満の問題点は、生きていく上で重要な、さまざまなホルモンの分泌が正しく行われなくなること。
そしてもうひとつ、肥満に至る過程が問題だと指摘しました。不規則で栄養が偏った食事、運動どころか、歩くことすら少ない生活、「再検査」を無視してしまう、あるいは無視せざるを得ない状況、睡眠不足やストレス……。
これらが重なり、体重は増え、やがて生活習慣病を発症する。糖尿病を発症したのは、「肥満に至る長い時間経過」が招いた結果なのです。
かつての糖尿病の治療は、血糖を下げて患者さんの予後をよくすることが目的でした。しかし、研究が進み、糖尿病患者さんの予後をよくするには、ただ血糖を下げるだけでは不十分だと分かってきたのです。何回もお伝えしていますが、「肥満に至る長い時間経過」が糖尿病を招いているからです。血糖コントロールが悪くなったのは、ひとつの結果であって、血圧が高い、コレステロールが高い、中性脂肪が高いなど、ほかの結果も招いているからです。