「放射線治療」の最前線 今や正常組織にダメージを与えず
定位照射は、転移したがんに関しても、これまで脳転移、肺転移、肝転移などに用いられてきた。わずかな副作用で良好な効果が得られているが、最近、海外の研究者によって「痛みなどの症状緩和の治療だけよりも、転移したがんに積極的に定位照射を行った方が、生存期間の延長が認められ、今後の治療指針に変更が加わるかもしれない」と発表された。
さらに放射線治療は、京都大学・本庶佑特別教授が発見し、ノーベル賞を受賞した免疫チェックポイント阻害薬との相性がいい。特に高精度放射線治療と免疫チェックポイント阻害薬の併用で、さらなる治療成績の改善が期待されている。
都立駒込病院では、放射線治療の60%以上に高精度放射線治療が行われている。対して、全国平均は10%ほど。がんと宣告されたら、高精度放射線治療の可能性を考慮に入れ、力を入れている病院を選ぶか、そういった病院でセカンドオピニオンを受けるべきだろう。
都立駒込病院は、造血幹細胞移植の拠点病院。白血病の骨髄移植の場合、白血病細胞を死滅させるため、前処置として全身に放射線を照射する。同院では、体に優しく確実に治療をするという目的で、高精度放射線を用いて、骨髄やリンパ組織などの白血病細胞が潜む臓器に重点的に線量投与する一方で、肺や腎臓などそれが不必要な臓器への線量を低減するという臨床試験を開始した。