アンチョビーは脳や血管の老化防止に 塩分には気をつけて
アミノ酸のうま味が開いた発酵食品でウイルス性の風邪予防
アンチョビーとは、小魚を三枚におろし、塩漬けにして冷暗所で熟成させたもの。つまり発酵食品であり、保存食品でもある。バスク地方などスペイン北部のバルではピンチョスとして定番の前菜となる。
オイルサーディンもイワシの加工食品だが、これはアンチョビーよりも大きめのイワシの頭と内臓を取ってそのまま油漬けして缶詰め加熱したもの。つまりオイルサーディンも保存食品ではあるが、発酵食品ではない。どちらもそれなりに酒の肴に最適だが、今日は塩味がよく効いたアンチョビーの方をいただこう。
発酵させている分、アミノ酸のうま味が開いて味わい深くなっている。いわゆる青魚なのでDHAやEPAといった必須脂肪酸もたっぷり含まれる。これらの成分は免疫系の賦活化にも重要なので、ウイルス性の風邪がはやっている今の季節、しっかり補給しておきたい。
アンチョビーに使われるのは、イワシの仲間のうちカタクチイワシ。他にマイワシ、ウルメイワシがいる。魚ヘンに弱いと書いてイワシだが、イワシは魚としてはとても優れており、地球の生命系においてとても重要な地位を占めている。太陽の光を海中の植物性プランクトンが光合成によって栄養分に変える。それを動物性のプランクトンが食べる。次に位置するのがイワシたちだ。群泳しながら巨大な水産資源を形成する。それがより大きな魚や鳥、アシカやクジラなどの数多くの海洋生物の糧となる。その一部を我々ヒトも分けてもらっているのである。
▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。
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