中川恵一
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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

理論上はがんの9割をカバー 「光免疫療法」の期待値と壁

公開日: 更新日:

 注射で薬剤を体内に入れ、薬剤ががん細胞に到達したところで光を照射し、がんを叩き、死滅した細胞から漏れ出た成分により、免疫細胞が増強されます。

 それによって長期にわたり、抗腫瘍効果が続くため、光免疫療法なのです。

 “運び屋”の抗体が結合できるのは、頭頚部がんのほか、肺がん乳がん大腸がん食道がん、すい臓がんと幅広い。理論上は、これらのがんにも効果があるはずで、全身のがんの8~9割をカバーするといわれているのです。

 この治療に使われる光は、生体組織内での透過性が高く、組織を傷つけずに深部に到達。「光の窓」と呼ばれますが、そうはいっても透過できるのはせいぜい体表から1センチほど。その性質から、現状は鼻や口、喉、顎などの頭頚部がんが対象になるのです。

 光の照射を内視鏡で行うとしても、がん細胞が消化管から遠いと難しいかもしれません。光は無害で、従来の抗がん剤のような副作用を大幅に抑えることもできるとはいえ、届く範囲が限られるのは現状のハードルでしょう。

 ガンマ線はその点をクリアできますが、被ばくの問題が。当面、がんができた場所と適応拡大が課題といえます。

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