「食」が生きる気力に 好きなものを好きな時に食べられる
病院から退院し、在宅医療に切り替えた患者さんが特に驚かれることに、「好きなものを食べたり飲んだりしていい」ということがあります。
在宅医療での食支援は、患者さんの状態の評価に加え、患者さんとその家族、日常生活、患者さんの嗜好などすべて加味したもの。味気ない、いわゆる病院食が続くのとは違うのです。
現在、われわれの在宅チームには言語聴覚士が加わっています。彼らの役割は、患者さんの状態を見極め、誤嚥がなく、かつ食べたいものを食べられるよう支援すること。一例ですが患者さんが奥さまでご主人が主な介護者の場合、嚥下評価で誤嚥リスク大となっても、食事のペース、一度に口に入れる食事の量などが夫の全介助でうまくコントロールできていると評価できれば、特別食ではなく、ご主人の作る食事を継続してもOKだよ、ということもあります。
これらの食支援は、患者さんが一口しか食べられないような場合でも、本人に食べたい意欲がある限り、ギリギリの時まで行います。「食」が生きる気力につながると信じているからです。
それを改めて痛感させられたケースがありました。80歳のがん末期の男性は、4月に退院して在宅医療に切り替え、7月に息を引き取りました。自宅で過ごした3カ月間は、この上なく充実した時間だったようです。