ジャングルでの孤独な潜伏生活を支えた素朴な宗教心とは
横井さんは、まったくの孤独の中でも、素朴な宗教心があったことで、もしかしたら心の中では真の孤独ではなかったのかもしれません。
■人はいざとなれば「神様!仏様!」と叫ぶもの
僭越ですが、自分自身の宗教心を見てみると恥ずかしい限りです。これまで、がんの患者さんが亡くなった時、遺族となった方々に「同じ病気の方のために役立ちますからお願いします」とお話しし、たくさんの方から病理解剖の了解をいただきました。患者さんの中には、亡くなる前に「先生から解剖を依頼されたら応じるように」と家族に話されていた方もおられました。
病理解剖は解剖台のご遺体に一礼して始まります。がんの病巣を探り出し、最後はご遺体を縫って、一礼して終わります。この時、“宗教”が頭に浮かぶことはほとんどありません。「ご苦労さま」と話しかけると、ご遺体が「はい」と返事をしてくださっているような、そんな感じでおりました。
随分前のある時、わが家には神棚や仏壇がないことに気づき、小さな仏壇を購入しました。そして、ご先祖さまと先に亡くなった姪の写真を置きました。いつも、新たに炊いたご飯を供え、水を取り換え、ろうそくをともし、線香をたきます。その程度の私です。