命を考える──恩師の人柄と考えに触れて思わされたこと
ある年の4月、某大学のT教授の定年退官記念パーティーが開催され、お世話になった私はその会に出席しました。近い座席に、私の母校の産婦人科教授だった品川信良先生がおられました。先生はおそらく80歳代の後半になっていたと思いますが、お元気そうで、学生時代に講義を受けた時とそれほど変わらないようにお見受けしました。
たまたま私はカバンに拙著「がんを生きる」(講談社現代新書)を持っていたので、名刺代わりに差し上げました。
それから約1週間後、品川先生からお手紙をいただきました。「講演に来て欲しい」とのことでした。びっくりしましたが、快諾し、3カ月後の初夏のある土曜日の午後、医師会の先生方が集まってくださり、「がんを生きる-命を考える-」と題して講演させていただきました。
講演が終わった夕方、宿泊するホテルに戻り、フロントで近くの駅までの翌朝のタクシー予約をお願いしました。私は朝6時半過ぎの東京行きの電車の切符を持っていました。翌日の午後に予定が入っていたので、昼ごろには東京に戻る必要があったのです。