鼻から新幹線が…俳優の神木優さんが慢性副鼻腔炎の手術を振り返る
神木優さん(俳優/42歳)=慢性副鼻腔炎
5年ほど前、「慢性副鼻腔炎」の手術をしました。「いやぁ、鼻ってこんなに空気が通るんだな」って、あまりにも衝撃的だったので、その感動を絵にしたら、鼻から新幹線が出てくる絵になりました(笑)。今でも保管しています。
物心ついた頃から鼻の通りが細く、ほぼ詰まっていました。5年前までずっと口呼吸で生きていたのです。
それが当たり前だったので特に不自由を感じることがなく、中学では陸上部、高校では野球部でバリバリ運動もしていました。
幼少期に一度、アデノイド(鼻の奥、上咽頭で細菌やウイルスなどによって起こる炎症)の手術をしたようですが、鼻詰まりは改善しなかったみたいです。でも、口呼吸をしていても口が乾燥してつらいとか、風邪をひきやすいといったこともなかったので、「みんなそんなもんなんだろう」と思ってました。
その認識が少し変わったのは、俳優という仕事を選んでからです。当時所属していた事務所の社長に「蓄膿症か?」と鼻声を指摘されました。「僕は鼻声なのか!?」と意識するようになり、鼻声にならないような発声を習得し、普通の声が出せるようになったんです。
でも意識しないと鼻声になるし、メークさんに「鼻詰まってますね?」と言われたこともありました。口呼吸なので息が荒くなるときがあって、しっかりバレていたのです。それ以降、呼吸法を考えたりもしました。
そんなとき、偶然に鼻専門のクリニックがあることを知ったのです。そして初めて手術できると知り、「そんな手術があるならやってみよう」と思って積極的に手術を選びました。
慢性副鼻腔炎は、顔の中にある空洞、鼻腔と副鼻腔をつなぐ小さな穴が炎症によって塞がる病気。自分の場合は、だいぶ空気の通り道が細かったので、骨を切る全身麻酔の手術でした。
事前に2日かけて睡眠時に無呼吸状態にならないかのチェックをしましたが、手術そのものは日帰りでした。何日も入院だったらいろいろ段取りしなくちゃならないけれど、日帰りなら気軽。それもあって手術に踏み切ったのです。
退院時は、両方の鼻の穴にギューギューに詰め物が入っていましたし、術後で鼻がパンパンにむくんだ状態で、日帰りとはいえ、結局、1週間くらいは人に会える状態じゃありませんでした(笑)。
そんな1週間が過ぎた頃、病院で詰め物を取ってもらったのですが、そのときの衝撃が忘れられません。ストローぐらいの長さのガーゼのようなものが片鼻から3本出てきたのです。両鼻で計6本! こんなに入っていたんだとびっくりしました。そして、初体験といってもいい全開の鼻呼吸。そりゃあ、新幹線が鼻から出てくるイメージになりますって(笑)。
決して不自由はしていなかったけれど、今思うと詰まった状態でよく生活していたなと思います。ずっと鼻をつまんでいるみたいだったわけで、あのままコロナ禍のマスク生活だったらと思うとゾッとします。手術をして人生が変わりました。でも、長年の口呼吸のクセがなかなか抜けなくて、今も時々なっちゃうんですけどね。
レーシックでも人生が変わった
実は自分の中で人生が変わった手術はこれが2度目なんです。1度目はレーシックでした。レーシックは、角膜にレーザーを照射して光の屈折機能を調整する視力矯正手術です。10年以上前のことなので、まだ周囲でやってる人が少なかった頃に受けました。動機はコンタクトが面倒だったから。当時はレーシックに対して批判的な声も聞かれましたが、特に不安はなかったです。「未来が変わるならいいじゃん」と思うタイプなんで。
結果、やって正解でした。こんなに世界はクリアだったんだと感激しました。片目ずつの手術でしたが、右目が終わって、左目に手術が移るその一瞬に見えた右目の景色がもう違いましたもん。
そういう良い経験があったので、慢性副鼻腔炎の手術もためらいませんでした。もっと早く知っていたら、もっと早く手術していたでしょう。つくづく「知らなかった」ってことはもったいないと気づきました。そこから、病気に限らず情報の受け皿を持っておくことの重要性を学びました。やるにしても、やらないにしても、知っていれば選ぶことができますからね。
多少の不調があっても生活に支障がないから大丈夫と思いがちですが、それももったいないと学んだので、今は早期に受診するようにしています。
今年2月にも胃もたれが1週間続いたところで受診し、「萎縮性胃炎」と診断されました。胃カメラ検査では「胃はキレイ」だったので、多分ストレスが原因だろうとのことでした。コロナ禍が明けて今までの鬱憤を晴らすように、企画や出演を立て続けにしたからか、精神的にも体にきたのかもしれません。胃薬で経過観察となり、先日3回目の受診をして経過は順調です。
今、何を食べたらもたれるのかあれこれ試しているんですけど、脂っこいもの、コーヒー、お酒はNGだとだんだんわかってきました。大のコーヒー好きだったんですけど、今は泣く泣くココアにしています。 (聞き手=松永詠美子)
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