認知症とがんを併発するとどんな問題が生じる? 備えておくべきこと
ほかにも、認知症を発症すると「痛みがあれば鎮痛薬」「吐き気があれば吐き気止め」といった発想ができず、症状を我慢しがちです。また、痛みがあっても認知機能の低下から痛みの強さを記憶できないので、今感じている痛みがどれくらいなのか、悪化したのかを的確に表現できず、患者さんに鎮痛薬が渡されていないケースも少なくないのです。
万が一、認知症とがんを併発した際に備えて、一度家族で治療方針の希望について話し合っておきましょう。また、かかりつけ医は治療方針の調整役を担っている場合もあるので、親と離れて暮らしている人は帰省時に親のかかりつけ医を把握しておくといいでしょう。
とりわけ地方は、いまだに近隣住民同士の関わりが密接で、運転が難しい高齢者に代わって近所の人が病院に送迎しているといいます。ときどき顔を合わせておき、親に何か異変があった際には連絡が取れるような状態にしておいてください。
▽小川朝生(おがわ・あさお)1999年大阪大学医学部医学科卒業、2004年大阪大学大学院医学系研究科卒業後、07年国立がんセンター東病院精神腫瘍科医員、15年から国立がん研究センター精神腫瘍科長、先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野長を務める。