「変形性膝関節症」痛みを抑える新たなメカニズムがわかった
膝が痛くて歩けない。膝の曲げ伸ばしがしづらい──。「変形性膝関節症」は60歳以上の女性の約半数、80歳以上では約8割が発症し、国内の患者数は2500万人と推定されている。消炎鎮痛薬や患部への注入療法など治療法はさまざまだが、副作用の報告も少なくない。そんな中、変形性膝関節症の痛みを抑える新たなメカニズムが発見され、新薬の開発が期待されている。研究を行った広島大学大学院医系科学研究科教授の森岡徳光氏に聞いた。
変形性膝関節症は、関節のクッションの役割を担う軟骨がすり減り、炎症を起こして痛みが生じる病気だ。加齢や遺伝、筋力低下のほか膝に負荷がかかるスポーツなどによって軟骨が摩耗されると、痛みや腫れ、関節のこわばりや変形が生じて、日常生活に支障を来しQOL(生活の質)を低下させる。
治療は、運動療法や薬物療法といった保存療法が基本だ。
「膝の痛みに対しては、ロキソニンなどの『非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)』が効果的とされる一方で、長期間服用すると胃腸障害だけでなく、逆に軟骨が摩耗して膝痛を悪化させるといった報告があります。また、炎症や痛みがひどい場合に使用されるステロイド注射も、骨粗しょう症を引き起こすリスクがあり、頻回な投与は控える必要があります」