妻が怖い。このまま死んでいくのはむなしい…80代男性患者が涙ながらに訴えた
奥さんは「何もできない」のではなく「何もしない」方。糞尿を処理できないからという理由でごはんや水分を旦那さんへあまり与えなかったり、旦那さんが失禁したり転倒したりすると、ものすごいけんまくで旦那さんを責める方だったと分かったのです。
ある時、奥さんがその場を外した時に、旦那さんと私だけでお話しすることがありました。
「あいつ(妻)が怖い」「このままこんな気持ちで死んでいくのはむなしい」
そんな言葉が次々と……。涙を流しながら、これまでのこと、これから先の不安を訴えられました。
病院では分からないそれぞれの生活や人生も、実際にご自宅に伺うと、分かることがいっぱいあります。そしてその事情をくみ取り最善の道をさがすことも我々の使命だと実感したのでした。
果たしてこの患者さんはご自宅にいることが最善なのか。そのことも含めて改めて我々は、この患者さんを紹介していただいたケアマネジャーさんと相談することとしたのでした。
その時、ここまで他人の生活に入り込み、それぞれの人生を支えられる在宅医療は奥が深いと、語り合いました。