(33)深夜のコンビニ駐車場…私の前でベンツが急ブレーキで止まった
ところが「どうも」とその男が会釈する。私がキョトンとしていると「しばらくです、内田さん。稼げてますか」とサングラスをとりながら親しげに話しかけてくる。なんと男は、かつて同じ営業所にいた後輩だった。事情を理解した私は「なにが稼げてますかだ、脅かさないでよ。初めからサングラスはずせ」と言い返した。さらにホッとして、「いま、何しているの?」と聞いた。「姉が近くでスナックやってるんで、その手伝いをしてるんですよ」と人懐っこい声で答えた。
彼は“渡り鳥”の一人だったが、いまは定住の“巣”を見つけたようだ。別れしな、私は「その格好で店にいれば立派な用心棒だ」とちゃかしながらエールを送った。