是枝裕和監督長編デビューの地…集団避難を乗り越えた83歳女性「ここにいられれば、これ以上望むことはない」
「ここにいられれば、これ以上望むこともないわ」
鵜入は正月の地震で一時、孤立状態となり、ヘリコプターでの集団避難を迫られた。
「金沢のもっと南、能美市の方まで避難しました。すぐ帰れるだろうと思っていたら、結局2カ月もかかった。一日でも早く鵜入に帰りたくて避難所では不安でした。3月に帰れることが決まり、内灘町を走るバスから久しぶりに海を見た時、本当にすっきりした。鵜入に戻ってこれるようになって本当にうれしかった。やっぱね、せわしねえ波の音が聞こえないと。朝、波の音で目が覚めて、外に出て、海の景色を見る。こんな良いところはない。ここにいられれば、これ以上望むこともないわ」
鵜入は電気や水道などの復旧が進み、今ではほとんどの住民が集落に戻ってきている。
能登半島には依然として故郷に帰れない人が多くいる。平穏な暮らしが一日でも早く戻るよう、国は復旧・復興を急がねばならない。(おわり)
(取材・文=橋本悠太/日刊ゲンダイ)