モンベル 辰野勇会長(1)最年少でアイガー北壁登攀に成功したアウトドアブランド創業者
28歳の誕生日にたった一人で企業
辰野氏は高校卒業後、登山用品店と総合商社で勤務する。
「総合商社で働いてた時、繊維部門を担当していたことがあり、『この繊維を使ったら、こんな山道具が作れるのではないか』と考えていたんです。繊維に関する知識を得て、自分で物作りをしようと思ったんです」
漠然と28歳で起業しようと決めていた辰野氏は、その思い通り、1975年、28歳の誕生日にたった一人で会社を始めた。
「30歳を過ぎたらリタイアするまでの時間が遅すぎる気がして、その直前ということで、28歳にしたんです。母親から200万円借りてきて、それを資本金にして会社を設立登記しました。すぐにその200万円を銀行から引き出して母親に返しましたけれど。名目上は資本金200万円でしたが、実質は0からのスタートでしたね」
■軽くて速乾性が高い寝袋を開発
モンベル初の商品はダクロン・スリーピングバッグ。当時は、雨に濡れると重量も増し、速乾性が低いダウンしかなかった時代に、軽くて濡れても速乾性が高いという画期的な商品を開発したのだ。
その3年後、ドイツの老舗登山用品店に飛び込みで、寝袋を販売しにいった辰野氏。つたないドイツ語で話す辰野氏を、当初は相手にしてくれなかったが、「アイガー北壁に登った」と話すと、相手は驚き、話を聞いてくれたという。
「その年のクリスマスにその会社から100個のオーダーが入ったのです。これグローバルマーケットへの第一歩でしたね」 =つづく
(ジャーナリスト・中西美穂)