モンベル 辰野勇会長(1)最年少でアイガー北壁登攀に成功したアウトドアブランド創業者
「子供の頃は体が弱くて勉強が苦手だったけど、山に行ったらなんだか落ち着きました。学校の成績が悪くても俺には山がある。山はずっと自分の居場所でした」
そう話すのは、登山愛好家だけではなく一般にも多くのユーザーを持つ、モンベルグループの会長である辰野勇氏である。
誰しもがそのロゴを目にした機会があるのではないだろうか。日本を代表するアウトドアブランドのモンベル。現在、グループ会長である辰野勇氏が、1975年に創業した。
「寿司屋の息子として生まれ、両親が働く姿を身近に見てきました。それで、大人になったら自分で仕事はやるものだと漠然と思ってたんです」
大阪府立和泉高校1年の時に教科書でオーストリアの登山家ハインリッヒ・ハラーの「白い蜘蛛」を読み、自分もアイガー北壁を登攀するという夢をいだいたという。
「当時、日本を代表するクライマーで、11歳上の中谷三次さんと国内の山を登り始めたんです。そこで、1969年にアイガーに彼を誘い、無事にアイガー北壁を登ることができました。また、同じシーズンにマッターホルン北壁も登りました。当時、1シーズンに3大北壁を2つ登ったのは私たちが初めてでしたし、当時、最短の21時間、21歳でのアイガー北壁制覇は最年少記録だったのです」