著者のコラム一覧
岡邦行ルポライター

1949年、福島県南相馬市生まれ。ルポライター。第3回報知ドキュメント大賞受賞。著書に「伊勢湾台風―水害前線の村」など。3・11後は出身地・南相馬中心に原発禍の実態を取材し続けている。近著に「南相馬少年野球団」「大島鎌吉の東京オリンピック」

体操団体金と種目別ゆか銅を獲得した「ソニーマン」の苦悩

公開日: 更新日:

ミュンヘン大会を前に引退を決意

 加藤は一般社員と同じように夕方まで勤務。その後は母校早大の体育館に通い、練習相手もライバルもいないままひとりで黙々と練習した。私の取材に応じた妻の宏子は夫について語った。

「新技を積極的に磨くのではなく、同じ技を繰り返し練習する。夫の加藤はそういう選手でした」

 学生時代にソニー入社を勧めた、早大体操部監督の大河原徳夫が体育館に姿を見せると加藤は言った。

「監督さん、オリンピックに出場すれば、ソニーの正社員になれますよね」

 先に述べたように加藤は、メキシコオリンピックで金メダリストになった。しかし、次のミュンヘン大会を前に潔く引退を決意した。引退すれば晴れて「正社員」になれるからだ。

 選手生活にピリオドを打ち、ソニーの正社員になったが、周りの目は冷たかった。金メダリストの新たな闘いが始まった――。  =つづく

▼かとう・たけし 1942年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後の65年春にソニー入社。68年メキシコ五輪体操団体金、ゆか運動銅、個人総合5位。66、70年の世界選手権団体優勝に貢献。

【連載】東京五輪への鎮魂歌 消えたオリンピアン

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    岡田阪神は「老将の大暴走」状態…選手フロントが困惑、“公開処刑”にコーチも委縮

  2. 2

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  3. 3

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  4. 4

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  5. 5

    中日・根尾昂に投打で「限界説」…一軍復帰登板の大炎上で突きつけられた厳しい現実

  1. 6

    安倍派裏金幹部6人「10.27総選挙」の明と暗…候補乱立の野党は“再選”を許してしまうのか

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    79年の紅白で「カサブランカ・ダンディ」を歌った数時間後、80年元旦に「TOKIO」を歌った

  4. 9

    阪神岡田監督は連覇達成でも「解任」だった…背景に《阪神電鉄への人事権「大政奉還」》

  5. 10

    《スチュワート・ジュニアの巻》時間と共に解きほぐれた米ドラフト1巡目のプライド