元阪神“F1セブン”上坂太一郎さん 不動産会社の営業マンになるまでのデコボコ道
上坂太一郎さん(元プロ野球選手/44歳)
巨人の猛追で阪神の独走から一転、ペナントレースが面白くなってきたセ・リーグ。16年ぶりの優勝を目指す阪神・矢野燿大監督に熱い視線を送るのは、故・野村克也監督時代に赤星憲広、藤本敦士ら俊足選手を揃えた“F1セブン”のひとりとして活躍した上坂太一郎さんだ。引退したのは2007年。さて、今どうしているのか?
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「不動産会社の営業マンになって今年で7年目。扱うのは、戸建て、マンション、土地など不動産全般ですね」
都内練馬区。西武池袋線の大泉学園駅北口から徒歩4分ほどの不動産会社「東宝ハウス練馬」へ行くと、和やかな笑顔の上坂さんに迎えられた。日中はほとんど外回りをしているため、よく日に焼けている。
「担当エリアは、練馬区を中心に半径20キロくらい。東なら北区・台東区、西は東久留米市・武蔵野市、南だと世田谷区、北が埼玉県所沢市・志木市あたりでしょうか。新型コロナの影響ですか? 売り上げが低迷している業界の方々には申し訳ないのですが、不動産業界は好調なんです」
上坂さんによると、「新型コロナの流行でリーマン・ショック並みの不況になる、と判断したディベロッパーが販売価格を一斉に値下げ。潜在需要が掘り起こされた」のだそうだ。
「追い風となったのがリモートワークです。仕事部屋が持てる戸建ての注目度が増し、交通の便がいい場所からどんどん売れていきました」
いったん下がった価格は上昇に転じ、「新型コロナ前に比べ5~10%前後アップ」という。
「年内には落ち着くとは思いますが、将来的に見ても首都圏集中の流れは止まらないでしょう。特に都内は大幅な下落はあり得ないので、買える時に買っておいたほうが断然お得です」
注目エリアは、練馬区だと都営地下鉄大江戸線の延伸計画がある、土支田、大泉町、大泉学園町。「価格上昇が予想されるため、今が狙い目」だそうだ。
阪神の後輩に騙され1000万円の大損
ところで、07年の引退後、神戸市内でもつ鍋居酒屋を経営したり、プロゴルファーを目指していたはずだが……?
「はい、そうです。もつ鍋屋は1年ほどやってました。ところが共同経営していた不動産屋と、誰とは言いませんが阪神時代の後輩に騙されて1000万円ほど損切りしてます。所轄警察署に相談したところ、『上坂さん、うまいことカタにハメられましたな。これはどうしようもないですわ』って同情される始末。あの時ほど人間不信になったことはありません」
ゴルフは阪神時代から大好き。80後半で回っていたため、ティーチングプロに教えを請い、もつ鍋屋の経営と並行してチャレンジしていたが、壁は高く厚かった。
「遠征の交通費や宿泊費など諸経費は全額自腹でしたから、キツいの何の。少しでも生活費を節約しようと、月4万円で借りたオンボロアパートを拠点に7年間頑張ったんですけど無理でした」
見切りをつけるか迷っている時に出会ったのが、親会社である東宝ハウスホールディングスの佐井川稔社長。同社は創業45年、グループ会社19社、不動産売買仲介実績で全国10位(19年、住宅新報調べ)を誇る住まいの総合コンサルティング企業だ。
「売りっ放しではなく、お客さまのローンが続く限りサポートしようという理念に惚れ込みました。右も左もわからないまま飛び込み、無我夢中でやってきましたが、『上坂から買ってよかった』と言われることを常に目標にしています」
■阪神時代の一番の思い出
阪神には2000年から8シーズン所属。プロデビューを飾った00年9月13日の対巨人戦では、猛打賞に盗塁2を記録する大活躍。故・野村監督が手放しで大喜びし、翌日のスポーツ新聞各紙には顔写真がデカデカと載った。
「一番の思い出は、実はそれじゃないんです。02年8月13日の対横浜戦。投手はグスマンでノーヒットの快投だったのですが、六回に代打で出た僕がライト前ヒットで粉砕。完封負けはしたものの、次の打席でもヒットを打ち、この試合、阪神のヒットは僕が打った2本だけでした」
バツイチ、独身。離れて暮らす長男は高校球児だ。
「時間がつくれたら、グラウンドへ見学に行っています。親バカ承知ですが、才能は僕よりあると思いますよ」
最後は父親の顔になった。
(取材・文=高鍬真之)