羽生結弦「混乱」と語った気になる今後 札幌市やJOCが知名度生かし冬季五輪招致の切り札に

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 男子フィギュアスケートで4位に終わり、3連覇を逃した羽生結弦(27)が14日、現地のメインプレスセンターで会見。最も広い会見場に海外メディアも含め100人を超える報道陣を集めて今大会を振り返った。

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 昨年11月のGPシリーズNHK杯を前に痛めた右足首の回復が遅れ、8日のショートプログラム(SP)の6分間練習の前に「痛み止めの注射を打ってもらって出場することを決めた」と満身創痍だったと明かした。史上初の成功を目指した4回転半(クワッドアクセル)について話が及ぶと「いろんな思いが渦巻いた結果として最高のアクセルができたと思います。たどりつけたと思いますし、僕の中では満足している」と笑顔を見せた。

 中国メディアから進退について問われると、「このオリンピックが最後かと聞かれたら分からない。オリンピックは特別だなって思いましたし、ケガをしてでも立ち上がって挑戦すべき舞台って、フィギュアスケーターとしてはそんなところは他にない。すごく幸せな気持ちだったので、また滑ってみたいという気持ちはある」と現役続行を示唆。

 だが一方では、「まだ次のオリンピックとかどこでやるのかなとか把握できていない自分がいますし、正直混乱しているんですけど、でもこれからも『羽生結弦として、羽生結弦が大好きなフィギュアスケートを大切にしながら極めていけたらいいな』と思っています」とも語った。

 とはいえ、右足首の状態は「今もかなり強い、許容量以上の痛み止めを飲んでいる」と明かし、限界に達している。男子フィギュアスケーターのピークとされる25歳を過ぎていることもあり、次の2026年ミラノ・コルティナ五輪への出場は現実的には厳しい。

 第一線を退いた後はバンクーバー五輪銀メダルの浅田真央のように、正式な引退表明をせず、アイスショーに出演して熱心なファンに演技を披露することになるのではないか。

■4回転半の実績と抜群の知名度

 今大会では羽生の注目度の高さが改めて証明された。94年ぶりの3連覇達成はならなかったが、14年ソチ、18年平昌と2大会連続金メダルを獲得。大技クワッドアクセルは回転不足と判定されたとはいえ、国際スケート連盟(ISU)公認大会では世界初の4回転半ジャンプとして認定された。

 日本のみならず各国のメディアが連日、大々的に取り上げ、大会期間中は競技の垣根を越えて多くのアスリートが羽生のパフォーマンスに注目した。IОC(国際オリンピック委員会)が羽生人気を念頭に、わざわざ「日本では10人のうち8人が(北京五輪を)視聴している」と発表したほど。7日の公式練習には国内外100人の報道陣がリンクに集まり、SNS上では「ユヅラー」と言われる熱狂的なファンが応援や激励のメッセージを寄せ続けた。

英語力を駆使したロビー活動

 フィギュアスケーターとしての実績、世界的な知名度の高さを生かさない手はない。羽生は30年冬季五輪招致に向けて動いている札幌市やJОC(日本オリンピック委員会)に招致活動の切り札として投入されるという。

 冬季五輪の顔としてのキャラクターに加え、羽生のコミュニケーション能力も大きな武器になる。

 練習拠点をカナダ・バンクーバーに置き、多くの海外遠征をこなしてきた羽生は英語が堪能だ。羽生が師事するカナダ人コーチのブライアン・オーサー氏は「ユヅルは英語が話せるようになったので、コミュニケーションに不自由しない」と太鼓判を押す。

 30年の冬季五輪招致に動いているのは札幌の他に、ソルトレークシティー(米)、バンクーバー(カナダ)、ピレネー・バルセロナ(スペイン)などの都市がある。

 開催地は、早ければ年内にもIОCによる内定が出るといわれ、23年インド・ムンバイでのIОC総会で、正式に決定する。

 20年東京五輪の招致活動では過去のオリンピアンがスピーチに立ち、開催都市としてのメリットをアピールした。英語が堪能な羽生ならIОC委員への札幌売り込みに適役だし、水面下で票集めを依頼するロビイストとしての活動も可能だ。

 札幌五輪招致を巡ってはコロナ禍で強行した昨夏の東京五輪のアレルギーが強く開催には賛否両論ある。地元メディアなどが実施したアンケートでは「反対」が多数を占めており、地元市民の機運の盛り上がりはいまひとつだ。

 羽生は以前、セカンドキャリアについて「振付師の仕事に興味がある」と話していたものだが、まずは札幌五輪招致アンバサダーとして利用されそうだ。

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