元ロッテ山崎裕之氏が村田兆治氏を悼む「頑固一徹、でも試合になると野手と息ぴったり」
■あうんの呼吸
山崎氏にとって特に印象深いのは、「隠し球」を巡るやりとりだという。
「二塁走者への隠し球はよくやりましたよ。これは投手との連係が必要不可欠。というのも、ボールを持たずにプレートに足をかけてしまうと、ボークになってしまうからです。適時打を打った打者が二塁上に来た時や送りバントが成功した時などは気が緩むのか、走者と一塁コーチャー、三塁コーチャーがボールから一瞬、目を離すことがある。このスキに私がボールを持っていた場合は、一塁手の名前を呼んで、ちらっとボールを見せる。これで兆治も気付くんですよね。あうんの呼吸で、『ひと呼吸置こう』といった自然な動作で、ロジンバッグをポンポンとやる。それを見た二塁走者がリードを取った時……というわけです。私の隠し球は兆治の協力あってのものでした」
引退後も一匹狼を貫き、コーチを務めたのはロッテで1年、ダイエーで3年のみ。野球の普及活動には熱心で、離島での野球教室は氏のライフワークとなっていた。
不世出のエースに合掌──。