広島が強い、首位阪神に再び2.5ゲーム差! カープを再建した新井采配「3つの濃密」
田中を復活させた「再生工場」
さらに元ヤクルトの野村監督ばりの「再生工場」も機能している。代表格が34歳の田中広輔である。昨季はプロ入り最少となる41試合の出場にとどまり、先発はわずか8試合。打率2割、プロ入り初の0本塁打、1打点だった。年俸は1億2000万円ダウンの3000万円。そんなジリ貧状態だったが、4日の阪神戦で貴重な5号3ランを放つなど見事に復活。前出の関係者は「昨年は正遊撃手の座を小園に取って代わられ、『新井さんが監督にならなかったらクビになっていたかもしれません』と周囲に漏らしていた。新井監督の就任を誰よりも意気に感じていた」と証言している。
広島で投手コーチや編成部長などを歴任した川端順氏がこう言う。
「能力は高いのにポカが多い小園を盲目的に使うのではなく、二軍で鍛え直しながら、ベテラン田中を復活させるなど、新井采配には『人情味』がある。野村も一軍に復帰して好投を続けている。新井監督は現役時代から兄貴分として後輩に慕われていた。田中とも小園とも話し合ったみたいですが、新井監督の最大の武器はコミュニケーション能力。チーム関係者に聞くところによると、ミーティングの前に、新井監督はそれぞれのコーチと2人きりで話をしてから臨むようです。ミーティングは始まってしまうと、そのまま進んでしまうことが多い。コーチも2人の方が意見を言いやすいし、新井監督はあえてそういう環境をつくりながら、コーチの考えを徹底的に吸い上げている。特に盟友の藤井ヘッドコーチとは密に連係していて、任せるところは任せながら、いい関係を築いているそうです」
新井監督は試合に負けた時もすぐには奥に引っ込まず、ベンチ前で選手を出迎える。サヨナラ勝ちの瞬間は、真っ先に飛び出してきてホームベース付近で喜ぶ。そんな兄貴分の姿勢がナインを鼓舞している。昨秋の就任直後のキャンプで、新井監督はこう訓示している。
「おまえたちが思っているより、俺はおまえたちに期待している。好き嫌いでの起用は絶対にしない。(現役時代にカープは)家族という言葉を使ったけど、カープという大きな家の中におまえたちはいる。例えば自分の弟は嫌いにならない。それと一緒。嫌いな人は一人もいない。みんなで楽しいことを共有して、みんなで強くなって、みんなで日本一になる。みんなで競争して切磋琢磨してほしい」
前出の川端氏が続ける。
「菊池らの主力をナイター翌日のデーゲームや移動日の試合で休ませるなど、勝負どころを見据えた細かな配慮を欠かさない。そして、決して選手を責めません。投手陣を立て直し、坂倉一辺倒だった捕手にしても、うまく会沢を併用しながら、誰かが腐らないように全員で戦う姿勢を見せている。広島は伝統的に暑い夏に強いので、これからが新井監督の腕の見せどころです」
積極攻撃、投手陣の再建、ベテランの再生工場……。選手、コーチと密にコミュニケーションを取りながら、チームを結束させる新井野球が、日に日に強さを増している。