著者のコラム一覧
金井真紀文筆家・イラストレーター

テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て2015年から文筆家・イラストレーター。著書に「世界はフムフムで満ちている」「パリのすてきなおじさん」「日本に住んでる世界のひと」など。

「感動する地図帖」イアン・ライト編著 Infographic.lyイラスト 片山美佳子訳

公開日: 更新日:

「感動する地図帖」イアン・ライト編著 Infographic.lyイラスト 片山美佳子訳

 地図を描いてと頼まれることがある。わたしはそもそもゆるい絵しか描けないが、地図のときはことさら肩の力を抜いて適当に描くことにしている。日本地図に北方4島を入れるか否か、アフリカ地図のモロッコと西サハラの境界は実線にすべきか点線にすべきか、など地図にはセンシティブな問題がたくさん詰まっていて、キチッと描くとたいへんだ。とはいえ地図は楽しい。見るたび、描くたびに発見がある。

 本書は、世界をさまざまなテーマで切り、それを地図に落とし込んだ地図帳。たとえば「自動車は右側通行か左側通行か」「マクドナルドがあるかないか」で世界を2色に塗り分ける。「人口10万人あたりのヘビーメタルバンドの数」を表す世界地図なんて、その発想に大笑い。北欧4カ国がぶっちぎりでヘビメタ色が濃いことが地図上で可視化される。

 高校時代に世界史図録を愛読していた人(わたしもそのひとり)は「バイキングが襲撃または定住した国々」「もしもモンゴル帝国が復活したら」「英国が侵略したことのない22の国々」といったページで、きっとテンションが上がるだろう。いつの時代も他人の土地を征服したがる乱暴者がいる。おかげで文化が行き来する。

 それにしても歴史上侵略しなかった国が全世界で22しかないイギリス、いくらなんでもやりすぎだろう!

 本書は世界中で大人気のウェブサイトを基にイギリスで出版され、すでに10カ国で翻訳出版されている。惜しいのは見開きページに配置された地図の中東付近がノドにかかって見にくいこと。すいませんねぇ、うるさい地図好きなもんで……。 (日経ナショナルジオグラフィック 2420円)

【連載】金井真紀の本でフムフム…世界旅

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    スタンフォード大・麟太郎のメジャースカウト評価は課題山積…ド軍指揮官からも耳の痛いアドバイス

  2. 2

    大谷が2026年WBCを辞退する可能性…二刀流継続へ「右肘3度目手術」は絶対避けたい深刻事情

  3. 3

    W杯8強へ森保J「5人の重要人物」 頭痛の種は主将・遠藤航の後継者…所属先でベンチ外危機

  4. 4

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  5. 5

    悠仁さまは学習院ではなぜダメだった?大学進学で疲弊する宮内庁職員「もうやめたい」と悲鳴

  1. 6

    阪神岡田監督の焦りを盟友・掛布雅之氏がズバリ指摘…状態上がらぬ佐藤輝、大山、ゲラを呼び戻し

  2. 7

    巨人「助っ人野手の獲得下手」汚名返上できた納得の理由…今年はなぜ2人とも“当たり”?

  3. 8

    大阪府の8割の小売店でコメ品切れ発生だが…吉村知事「備蓄米放出しろ」が腑に落ちないワケ

  4. 9

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 10

    巨人・坂本勇人は《潔くユニホーム脱ぐべき》低迷でも“1年延命”で現役続行か