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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

血圧測定が日常生活の一部になっている人はたくさんいる

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 今回からは血圧についてです。ここまで取り上げた糖尿病肥満も生活上身近な話題ではありますが、血圧ほどではないかもしれません。体重は量らなくても血圧は測る、そういう人もいます。さすがに食事を忘れても血圧測定は忘れないとなると、そんな人はいないでしょうが、食事の前には必ず血圧を測るというように、もはや血圧測定自体が生活の一部になっている人も少なくないでしょう。

 血圧測定は、なぜここまで日常的なことになったのでしょうか。高血圧の大部分は無症状ですし、症状があるとしても日々の生活に影響が出るような症状をきたすことはほとんどありません。にもかかわらず毎日血圧を測るのが日課という多くの人たちを生み出しました。

 その背景として、まず安価で正確な自動血圧計が簡単に手に入るようになったことが大きいでしょう。さらには、この先起こるかもしれない脳卒中心筋梗塞などの合併症に対する不安と、それを予防したい医療者が、自宅での血圧測定を普及させたのだと思います。

 高血圧が脳卒中や心筋梗塞の危険を増し、血圧測定が有効であることは確かですが、それは確率的な問題に過ぎません。高血圧だからみんな脳卒中になるというわけではありませんし、血圧が低いからといってみんな脳卒中にならないというわけでもありません。また血圧の薬を飲んだからといって脳卒中にならないわけでもないですし、薬を飲まないとみんな脳卒中になってしまうわけでもありません。

 次回からはそのあいまいな部分について、できるだけわかりやすく、データを示しながら説明していきたいと思っています。

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