体内では毎日無数のがんが出来るのに健康でいられる理由
ノーベル医学生理学賞の受賞でがんの免疫療法が話題だ。今週はがんと免疫について考えてみたい。ヒトの体の中では毎日無数のがん細胞が生まれる。にもかかわらずがんにならないのは、がん免疫監視機構があるからだ。免疫とは「自己と非自己を区別して、非自己を排除する仕組み」であり、自然免疫と獲得免疫に大別される。
自然免疫はもともとヒトに備わっているもので、マクロファージ、NK細胞、樹状細胞などを指す。細菌やウイルス成分など異物と結合する受容体を細胞表面に持ち、攻撃すべき目標(抗原)を認識すると活性化し、異物を攻撃する。
一方、獲得免疫は異物に対して後天的に形成される免疫反応のこと。B細胞とT細胞が中心で、B細胞は抗原を認識するとそれと特異的に反応する抗体物質をつくり、その物質は抗原に結合して抗原を持つ細胞を除去する。T細胞は直接、抗原を攻撃する。
ちなみに、獲得免疫には自然免疫と違って免疫記憶があり、異物への攻撃を終えたT細胞はメモリーT細胞として体の中に長期間存在する。はしかの病原体から作ったワクチンを打つとはしかになりにくいのは、はしかのワクチンを抗原として記憶したT細胞がメモリーT細胞となって体内にとどまる仕組みを利用しているからだ。