摂食、排泄、睡眠…日々の生活の恒常性を崩してはいけない
前回お話ししたように、近年は食事と心臓疾患の関連についての研究が盛んに行われています。そのほとんどは、いま健康な人が病気にならないようにする1次予防のための効果を調べた研究で、肯定的な結果が出ているケースが多いのも確かです。
しかし、だからといって消費者が右往左往する必要はありません。たとえば、「○○○には心臓疾患を予防する成分が豊富に含まれている」という研究結果が報告されたとしても、それにとらわれ過ぎてその食品や成分を偏って摂取したり、無理に食事を改善してしまうと、かえってマイナスになってしまう場合もあります。
そんな事態を避けるためにも、食事と病気との関連についての研究結果は、賢く“利用”することが大切です。
たとえば、前回も紹介した「乳製品は心臓疾患の発症リスクを下げる」という報告について考えてみましょう。少し前まで、「乳製品は腸内細菌のバランスを改善して腸内環境を整える」という研究結果がたくさん報告されていました。大腸内には100兆個もの腸内細菌が生息していて、免疫機能をコントロールしています。乳酸菌などの善玉菌、大腸菌などの悪玉菌、それ以外の日和見菌に大きく分けられ、バランスが崩れて悪玉が優勢になると、全体の4分の3を占める日和見菌が悪玉的な働きをするようになります。そのため、善玉菌=乳酸菌を多く含む乳製品は腸内環境を整えて、健康に良い効果があるとされているのです。