保険でカバーできる「傷が残らない」甲状腺の内視鏡手術
国内では2014年に先進医療になり、16年に「部分切除、腫瘍摘出術」「バセドー病の全摘術」「副甲状腺手術」が保険適用に、続いて18年に「甲状腺がん」が保険適用になった。
ただ、先進医療のときは全国9施設のみで集約されて行われてきた経緯があり、研修場所の少なさから執刀医要件をクリアする医師の数がまだ少ないことが、普及が進んでいない理由。保険適用のすべての内視鏡手術を実施する病院は、同センターを含め全国で数施設しかないという。
片山センター長は、旭川医大在籍当時の09年に清水教授のもとでVANS法の研修を受け、これまでの手術数は約560例。いまでは他院からの研修医師を年間10人前後受け入れ、甲状腺内視鏡手術の普及に尽力するひとりだ。
■首の傷は5ミリ1カ所
では、首に傷を残さず、どのように内視鏡を挿入して手術をするのか。
「VANS法で切開するのは、開襟のシャツで隠れる鎖骨の外側下に2・5センチ程度のシワに沿った切開1カ所と、首には内視鏡を挿入する5ミリの切開1カ所だけ。首の傷はわずかなので残りません。鎖骨下の傷も小さいのでほとんど目立たない。傷が盛り上がるケロイド体質の人でもシャツで隠れてしまいます。従来の外切開手術では1週間程度の入院が必要ですが、例外を除くとVANS法ではほぼ全例で術後3日目に退院しています」