5年後に治る可能性 「遺伝子治療技術」で難病が消えていく
「スピンラザは、SMAの原因である遺伝子の変異部分を複製しないようにする薬です。翌年には、この疾患の治療薬の真打ちとも言える新薬『ゾルゲンスマ』が登場しました。アデノ随伴ウイルスを用いて正常な遺伝子を発現させるものです。米国では2019年に承認され、日本でも、画期的な新薬に限って審査期間を大幅に短縮する『先駆け審査指定制度』により2018年末に申請されています。この薬の問題点のひとつは、米国では1例当たり2億円を超えたという治療費です。1回投与の超高額注射薬というのは、治療を担当する医師でさえ内心ドキドキです。治療費の問題に加え、複雑な製造工程が審査対象であることなどもあり、先駆け制度には珍しく長期化していて、承認審査の完了は来年に持ち越される状況です」
2018年末に公開された映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」の主人公の病気として知られるようになった「筋ジストロフィー」。発症が男児に限定される遺伝性疾患(厚生労働省の指定難病113)で、出生男子の3500人に1人の割合で発症する。
無治療で放置すれば10歳未満で歩行困難となり、10代後半で呼吸筋や心筋が障害を受け、心不全で死に至る。ジストロフィン遺伝子の異常によりアミノ酸が正しく作られないために筋肉の細胞膜に存在するジストロフィンが発現しないなど、いくつかの病型がある。