母親を亡くした息子が怒りをあらわに…重要性を痛感したACP
先日、埼玉県ふじみ野市で、訪問診療中の医師が散弾銃で撃たれて命を落とすという痛ましい事件がありました。心よりご冥福をお祈りしたいと思います。
同じ在宅医療に従事する者として、他人事ではなく衝撃をもって受け止めると同時に、在宅医療そのものを改めて見直す分岐点になる事件ではと考えたのでした。読者の皆さんはどうお感じになられたでしょうか。
私たち医師やスタッフは常に患者さんがより良い状態にあることを目指し仕事をしています。そしてそのことを患者さんやご家族も理解し受け止めていただいているものだと信じて疑いませんが、このように思いがけず残念な結果を迎えることもあるということなのです。
以前、そんな患者さんのご家族との、微妙な関係を思い知った出来事がありました。
あれは2021年10月ごろ。息子さんと95歳のお母さまの2人暮らしのお宅でした。
息子さんはいつも笑顔で出迎えてくれ、私たちとの関係は良好と言えるものでした。お母さまは尿路感染症を繰り返し患い、息子さんからは毎日4~5回、LINEや電話で状態が伝えられるという状況が続いていきます。もちろんその都度お返事はするのですが、時に深夜や繁忙時には、申し訳ないなと感じながらも、長いご連絡に対してお返事が数行になることもしばしばありました。