国産初の新型コロナ経口治療薬はどれくらい効果があるのか
塩野義製薬が臨床試験を進めている国産初の新型コロナ経口治療薬(S-217622)が注目されている。先月25日、厚労省に承認申請したことが発表され、「条件付き早期承認制度」(治験の途中でも一定の有効性や安全性が確認されれば実用化可能)が適用されるとみられている。効果は期待できるのか。
現在、日本で承認されている新型コロナウイルス感染症に対する経口治療薬(飲み薬)は、メルク社の「ラゲブリオ」(一般名:モルヌピラビル)と、ファイザー社の「パキロビッド」(一般名:ニルマトレルビル/リトナビル)の2種類。いずれも、重症化リスクがある軽症者(18歳以上/12歳以上)が投与の対象だ。
一方、塩野義の経口治療薬は、重症化リスクに関係なく12歳以上の無症状・軽症・中等症の感染者を対象として臨床試験を進めている。このまま承認されれば、メルク社とファイザー社の治療薬に比べ、幅広い感染者に投与できるようになる。
「これら3種類の経口治療薬は、いずれも体内に侵入したウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬です。メルク社のラゲブリオは『RNAポリメラーゼ阻害薬』といわれるタイプで、ウイルスが増殖する際に必要な酵素の働きを阻害して遺伝情報のコピーミスを引き起こし、ウイルスの増殖を抑制します。ファイザー社のパキロビッドは『プロテアーゼ阻害薬』というタイプで、新型コロナウイルスのRNAを合成する3CLプロテアーゼと呼ばれる酵素の活性を阻害して増殖を阻止します。塩野義の経口治療薬は、パキロビッドと同じ機序でウイルスの増殖を抑えます」(岡山大学病院薬剤部の神崎浩孝氏)