荒川隆之
著者のコラム一覧
荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

【細菌性食中毒】高温でも死滅しないウェルシュ菌が2日目のカレーで増殖

公開日: 更新日:

 前回に続き、夏場に多い細菌性食中毒についてお話しします。

 今回は「ウェルシュ菌」という細菌です。あまり聞き慣れない菌名かもしれませんが、ウェルシュ菌は、土壌や水中、健康な人や動物の腸内など自然界に広く分布しています。特に牛、鶏、魚が保菌しているケースが多く、これらの食品を用いた煮込み料理が食中毒の原因になることが知られています。

 ウェルシュ菌は、周りの環境が悪くなると、耐久性の高い「芽胞」と呼ばれる状態に変化します。この芽胞は100度で1時間の加熱にも耐えるとされており、高温の調理でも死滅せずに生き残ります。肉や魚介類を使った「カレー」「スープ」「シチュー」などを大量に作った場合、調理が終わり、食品の温度が発育に適した温度まで下がると発芽して、急速に増殖を始めます。こうして食品の中で大量に増殖したウェルシュ菌が食べ物とともに胃を通過し、小腸内で増殖して毒素(エンテロトキシン)が産生され、その毒素の作用で下痢などの症状が引き起こされるのです。

 ウェルシュ菌の潜伏時間は約6~18時間で(平均10時間)、主な症状は腹痛と下痢、特に下腹部が張る場合が多いとされています。特別な治療を行わなくても1~2日で軽快するケースがほとんどで、重症化することは多くありません。ただ、下痢をしている最中には経口補水液による脱水予防など対症療法を行うとよいでしょう。子供や高齢者などは成人に比べると重症化するリスクがあるので、点滴による治療を行う場合もあります。

 “2日目のカレー”はたしかにおいしいのですが、鍋のまま室温で放置するのは避けましょう。特に夏場は気温も高いので、細菌が繁殖しやすい環境になっています。前日調理は避け、加熱調理したものはなるべく早く食べること。面倒でも小分けし、冷蔵庫に保管することをおすすめします。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    「踊る大捜査線」12年ぶり新作映画に「Dr.コトー診療所」の悲劇再来の予感…《ジャニタレやめて》の声も

    「踊る大捜査線」12年ぶり新作映画に「Dr.コトー診療所」の悲劇再来の予感…《ジャニタレやめて》の声も

  2. 2
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 3
    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

  4. 4
    阪神岡田監督の気になる進退 来季続投がスジだが…単純にそうはいかない複雑事情

    阪神岡田監督の気になる進退 来季続投がスジだが…単純にそうはいかない複雑事情

  5. 5
    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  1. 6
    大谷への理不尽な「ボール球」ストライク判定は差別ゆえ…米国人の根底に“猛烈な敵愾心”

    大谷への理不尽な「ボール球」ストライク判定は差別ゆえ…米国人の根底に“猛烈な敵愾心”

  2. 7
    巨人・岡本和真「急失速の真犯人」…19打席ぶり安打もトンネル脱出の気配いまだ見えず

    巨人・岡本和真「急失速の真犯人」…19打席ぶり安打もトンネル脱出の気配いまだ見えず

  3. 8
    新関脇・大の里の「大関昇進の壁」を親方衆が懸念…看過できない“練習態度”の評判

    新関脇・大の里の「大関昇進の壁」を親方衆が懸念…看過できない“練習態度”の評判

  4. 9
    高橋一生「ブラック・ジャック」高視聴率も続編困難か…永尾柚乃“完璧ピノコ”再現に年齢の壁

    高橋一生「ブラック・ジャック」高視聴率も続編困難か…永尾柚乃“完璧ピノコ”再現に年齢の壁

  5. 10
    阪神岡田監督の焦りを盟友・掛布雅之氏がズバリ指摘…状態上がらぬ佐藤輝、大山、ゲラを呼び戻し

    阪神岡田監督の焦りを盟友・掛布雅之氏がズバリ指摘…状態上がらぬ佐藤輝、大山、ゲラを呼び戻し