認知症予防に運動は有効なのか? 気を付けるべきポイント
認知症予防には「運動」が有効だと耳にしたことはありませんか? 1960年代から認知症に関する研究を行っている久山町研究によると、運動習慣がない人に比べて週1回以上の運動を行っている人は、アルツハイマー型認知症の発症リスクが40%低いと報告されています。
アルツハイマー型認知症は脳の海馬の萎縮により発症します。運動すると血流量が増加して、アセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質を活性化させるほか、アセチルコリンは脳由来神経栄養因子(BDNF)というタンパク質の分泌量を増やすことが明らかになっています。これはもともと海馬に多く含まれていて、脳の神経細胞を成長させる役割があるので、海馬の機能を維持してアルツハイマー型認知症の発症を防げるのではないかと考えられています。
私が実際に訪問診療で伺っている患者さんは、最初の診療時には筋力の低下でベッドから起き上がれない状態でした。ベッドから立ち上がる運動から始め、立ち上がれるようになったら立った状態で壁に両手を付けて腕立て伏せを1回につき10回、1日3クールを3年間続けたところ、今では1人でコンビニに歩いて買い物に行けるまで回復し、90代になった現在でも認知機能を維持しています。