家族に迷惑かけたくない…そう考えている認知症の親への対応は?
認知症予備群とされる軽度認知障害(MCI)や認知症初期の段階で認知機能の低下を自覚し、「将来、家族に迷惑をかけるのではないか」と不安を抱えている高齢の方は少なくありません。なかでもアルツハイマー型認知症(AD)の方によく見られ、発症前から「何事も自分一人で解決する」といった考えを持っている人ほど周囲に頼ることができず、自身の認知症も受け入れにくいのです。ADの特徴的な症状のひとつに挙げられる「取り繕い」も、認知症を受け入れられないことから生じています。
当院に通院している80歳のADの患者さんは、MCIと診断された後、「一番なりたくない病気になってしまった」「悪くなったら息子に迷惑をかけるから早く死にたい」と、自信を失って抑うつ状態になってしまいました。介護する家族に対しての申し訳なさと、何もわからなくなることへの恐怖を感じていたためです。
本人の不安な気持ちを改善するには、家族は「そばにいるから心配ないよ」、仕事をしていた人であれば「これまで家族のために働いてくれたから、これからはゆっくりして過ごしてね」など安心できる声掛けを行ってください。男性の方ならば、買い物に行った際に重い荷物を任せる、女性ならば一緒に家事を行うなど役割を担ってもらうのも「認知症を発症しても自分は家族の力になれる」と本人が実感し自信につながるでしょう。