「塩分」は心臓の健康にとってやはりマイナスといえる
また今年3月には、「心不全患者では、塩分(ナトリウム)摂取量を過度に制限すると死亡率が上昇する」という研究が米国心臓病学会で報告されました。ナトリウム摂取量を1日2.5グラム(食塩換算で約6.4グラム)未満を目標とする食事療法を行っていた患者は、摂取量上限が2.5グラム以上の食事療法を行っていた患者よりも、死亡率が80%高かったといいます。
塩分は心臓にとって大敵……という“常識”が覆されるような研究結果です。しかし、心臓血管の領域で40年近く診療に携わってきた立場からすると、塩分(ナトリウム)の過剰摂取は心臓にとって良くないのは間違いありません。
ナトリウムは、人の体内で水分量の調整に関わっていて、通常は一定の濃度を維持しています。しかし、塩分過多でナトリウム量が増加すると、水分量を増やして濃度を下げようとするため、結果的に血液の量が増えることになります。すると、血液を全身に送り出している心臓にかかる負担はそれだけ大きくなるのです。
血液の量が増えれば、血管にかかる圧力が強くなるので血圧も上昇します。ですから、心機能が低下している心不全の患者さんや高血圧の人には、塩分制限が有効とされていて、日本でも数多くのエビデンス(科学的根拠)が存在しています。