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内田正治タクシードライバー

1951年埼玉県生まれ。大学卒業後、家業の日用品、雑貨の卸会社の専務に。しかし、50歳のときに会社は倒産。妻とも離婚。両親を養うためにタクシードライバーに。1日300キロ走行の日々がはじまった。「タクシードライバーぐるぐる日記」(三五館シンシャ)がベストセラーに。

(30)忘れられない「赤の思い出」…おめでたい出来事もタクシーの中では話は別

公開日: 更新日:

「これは捨てなきゃならないね」

 営業所で事情を話すと、担当者は私を気の毒がるようにいい、新しいシートを渡してくれた。シートの交換を終えると、私はすぐに街に出ていったが、かぎられた時間の中で、できるだけ稼がなければならないドライバーにとって、往復2時間近い「タイムロス」はうれしいことではない。

 女性の成長の証しであるこの出来事は、ひと昔前なら、おめでたいということで赤飯を炊いて祝うこと。とはいっても、それがタクシーの中、それも見ず知らずの中年男に事情を話さなければならないとなれば、躊躇してしまうのは無理からぬことだ。「大丈夫、いいの、いいの」という母親の反応も責めるわけにはいかない。私にとっては災難といえば災難かもしれないが「娘さんにとってはおめでたいこと。長くやっていれば、こんなこともあるよな」と自分に言い聞かせた。

 ただ、あの娘さんが、この先“そのとき”が来るたびに、「運転手さんにひどいことをした」と“汚点”として思い出すことがなければいいなと感じながら……。

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