著者のコラム一覧
岡邦行ルポライター

1949年、福島県南相馬市生まれ。ルポライター。第3回報知ドキュメント大賞受賞。著書に「伊勢湾台風―水害前線の村」など。3・11後は出身地・南相馬中心に原発禍の実態を取材し続けている。近著に「南相馬少年野球団」「大島鎌吉の東京オリンピック」

正社員になり昇進も 後進を育てる夢を叶えぬまま旅立った

公開日: 更新日:

 そんな加藤が会社の定期健診で「胃がんの疑いがあり」と言われて入院したのは81年7月末だった。再診の結果は胃潰瘍。胃を3分の2ほど切り取り、3カ月入院し、念には念を入れて再度がん検査をしてもらった。その結果、「ほぼ99%大丈夫です」と語る医師の言葉を信じた。

 吉報もあった。入院生活を終えた翌82年3月、加藤は異例とも言えるスピードでソニー本社の勤労課長就任の辞令を手にしたのだ。

「これでようやく一人前のソニーマンになれたよ。体操と同じだ。コツコツやれば報われる。もう安心だ……」

 妻の宏子に真っ先にそう報告した。さらに数日後は、母校の早稲田大体操部OB会に出席。加藤は、照れ顔を見せつつも「昇進しました」と、課長の肩書が刷り込まれたばかりの名刺を手渡した。むろん、OBたちはこぞって祝福した。

 そんな加藤にOBたちは、早大体操部コーチ就任を打診してきた。もちろん、彼は喜んで近い将来引き受けることを約束した。メキシコオリンピックで金メダリストになって以来、いずれメダルを狙えるオリンピアンを育てたいと思っていたからだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    藤原竜也「全領域異常解決室」に「SPEC」ファンから“追い風”! 演技派・柿澤勇人の伸びしろにも期待大

  2. 2

    どうなる?「トリガー条項」…ガソリン補助金で6兆円も投じながら5000億円の税収減に難色の意味不明

  3. 3

    二宮和也が「ブラックペアン」続編を退所後の初仕事に選んだウラに“子供のお受験”問題

  4. 4

    ダルビッシュの根底にある不屈の反骨精神 “強いチームで勝ちたい大谷”との決定的な違い

  5. 5

    米女子ツアー「崖っぷち3人娘」はどうなる? 次戦でシード選手と最終戦出場者が確定

  1. 6

    ソフトB悪夢の本拠地3連敗「2つの敗因」…26イニング連続無得点よりも深刻なチーム事情

  2. 7

    竹内涼真「龍が如く」は酷評の嵐…実写化ドラマ“改悪”続出で、いよいよNetflix一強時代へ

  3. 8

    いまや大谷ドジャースこそ「悪の帝国」だ…カネ&人気&裏技フル活用でタンパリング疑惑まで

  4. 9

    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

  5. 10

    佐々木朗希の獲得に「第3の球団」急浮上…来春日本開幕でvs大谷ドジャースの可能性