開幕投手決定の裏側…各球団監督はこんなことを考えている
私の決断を当時のメディアは「奇策」「ギャンブル」と受け止めた。
横浜の監督に就任した1998年の話だ。開幕投手に入団2年目の川村丈夫を指名。実績なら三浦大輔、経験なら野村弘樹と予想する向きが多かった。前年は3人とも10勝。三浦はわずか3敗で最高勝率のタイトルを獲得していた。担当記者がオッズをつけていたとしたら、確かに川村が最も高かったかもしれない。
もちろん、私には勝算があった。なぜ、川村なのか? 記者からしつこく質問され、「あいつの若さとインテリジェンスに懸けた」と答えたが、半分は本音で半分は別の思惑があった。川村はクレバーで目先のことに汲々としないタイプ。抑えても打たれても表情ひとつ変えずに淡々と仕事をこなす。肝が据わっていて、1年目からすでにエースの雰囲気を漂わせていた。当時の横浜は38年間も優勝から遠ざかっていたチーム。変革が必要不可欠で、川村の抜擢はそれを鮮明にする狙いがあったのは事実だ。
その一方で現実的な計算をした。開幕2戦目に三浦、3戦目に野村を配置したのは、3連敗を避けるため。仮に川村、三浦で落としても、経験豊富でしぶとい野村なら悪い流れを断ち切ってくれるだろう。つまり、私が最も信頼を置いていたのが野村だったのだ。