引退したフェデラーはテニスの市場や裾野を拡大させた スーパースターの偉大な功績
「完璧な旅だった」
9月23日、レーバー・カップ(ロンドン)で現役を引退したロジャー・フェデラー(41=スイス)がこう言った。
4大大会のシングルス20勝、史上最高のテニス選手のひとりといわれただけに、本人が「完璧な旅」と振り返ったのも当然か。
しかし、スポーツライターの武田薫氏は、「フェデラーの功績はそれだけじゃない。季節、距離、時間……それらをひっくるめて世界を縮めたことでしょう」とこう続ける。
「今でこそ全豪、全仏、ウィンブルドン、全米を4大大会と呼びますが、そもそもテニスのツアーは北半球中心。実績あるトップ選手は季節が逆でオフの時期に、わざわざ距離のある全豪には積極的に行こうとしなかった。そういった状況で2003年にウィンブルドンを制し一気にテニス界の頂点に立ったフェデラーが、翌04年の全豪に出場、優勝したことで流れが変わった。全豪の格は上がり、テニスのツアーは南半球やアジアにも広がった。テニスの市場や裾野が飛躍的に拡大し、文字通り世界ツアーとなったのは空路を含めた技術革新だけではない。そこにフェデラーというスーパースターが乗っかったことが何より大きかったのです」
大坂なおみが60億円以上稼ぎ、女子アスリート史上最も稼ぐ選手になったのも、テニスが世界的なスポーツとして認知されたからこそ。錦織が山ほど稼ぐ高給取りになったのも同様だ。彼らはフェデラーにアタマが上がらない──。