日本人論文で注目 糖尿病薬で「前立腺がん」抑え込めるか
「GLP-1はほかにも血糖値を上げるホルモン(グルカゴン)の分泌を抑制したり、すい臓のβ細胞を増殖したり、摂取した食物の胃からの排出を遅らせたり、食欲を抑えたり、脳神経の保護をしたりなどさまざまな作用が明らかになっています。今回、新たにがん細胞の増殖を抑える作用が判明したのです」(辛院長)
■乳がん、大腸がんも
マウスを使った6週間の動物実験では、GLP-1受容体作動薬を使ったマウスの前立腺がんは、使わなかったマウスに比べて明らかに増大が抑制されたという。論文を発表した、福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科の野見山崇准教授が言う。
「この研究はGLP-1受容体作動薬の抗腫瘍作用を、そのメカニズムまで詳細に明らかにした初めてのものです。私たちはまず、前立腺のがん細胞にGLP-1受容体があることを免疫染色で確認。その後、GLP-1受容体作動薬を前立腺がん細胞に投与したところ、GLP-1受容体が多いと考えられる前立腺のがん細胞ほど、がん増殖抑制効果が高いことが分かったのです」
その後、マウスによる動物実験でこれを証明した。