<5>「向田邦子のはがき作戦」でボケ対策するも…撃沈
2016年、本格的な介入を決意した姉と私は、まず地域包括支援センターに電話をし、要支援認定の不服申し立てをすることにした。そして父を運動させるために、リハビリ専門のデイサービスに通わせることに。週1回、送迎付きで通い始めた父。リハビリだけでなくマッサージもしてくれる。私が行きたいくらいだ。初めはおっくうがっていた父も、次第に慣れていった様子。
ただし、本人のやる気がなければ、スタッフも無理強いはできない。父は行っても、体を動かさずに座っていただけかもしれない。疲れて帰ってくるものの、機能が向上する気配はまったくなかったからだ。おそらく若いころから体を動かす習慣のあった人には効果的だが、父のような運動音痴のガリ勉タイプには不向きだったのだ。
そこで思いついたのが「向田邦子のはがき作戦」である。
彼女のエッセー「字のないはがき」は、学童疎開した幼い妹に大量のはがきを渡し、元気な時は〇をつけてポストに入れるように指示した父親の話だ。
父に、切手を貼りつけた大量の絵はがきを渡した。「なんでもいいから書いて毎日ポストに出しに行って」と。