「インスリンの量を減らして」と主治医が毎回言う理由は
血糖値の過去1~2カ月間の平均値とも呼ばれるヘモグロビンA1cが、僕は6.0前後で、健常者並みであると前に書いた。それは本来、喜ばしいことなのだ。しかし主治医からは毎回、「低すぎる。7.0くらいを目指して」と注意される。
“低いほうが望ましい数値”をもっと高くしろと言われるのは一見矛盾しているようだが、主治医がそう言うのにも理由がある。それだけA1cが低いと、低血糖も頻発しているはずで、それを心配しているのだ。
その理屈はわかる。高血糖を恐れるあまり、インスリンを打ちすぎて低血糖を起こし、揚げ句、命まで危険にさらすようでは元も子もないからだ。
でも、現に高血糖と闘っている当事者は僕であって、主治医ではない。言う通りにした結果、合併症を起こしたとしたら、どう責任を取ってくれるつもりなのか。
高血糖であることは、放射線被曝に似ていると僕は前から思っている。ごくたまに微量の放射線を浴びたところで、人体にはほとんどなんの影響もないが、微量でも日常的に浴びつづければ、やがて臨界点を超え、体に異常が出始めるだろう。それを可能な限り避けようとすることの何がいけないのか。おかげで、診察室で主治医とケンカ寸前になることすらある。僕は主治医にとって、決して「いい患者」ではないのだ。毎回、判で押したように「インスリンの量をもっと減らして」と指示してくる主治医に向かって、かつてこう反論した。